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日にち薬 [エッセイ・うらぴょん通信]

 かつてホームページに掲載していた「うらぴょん通信」をもう一度読みたいという、ありがたいリクエストを、最近またいただきましたので、今回は「日にち薬」を掲載します。

 「日にち薬」
 日にち薬という言葉があるそうだ。
 いやなこと、つらいことがあっても、日が経つにつれて人は忘れていく。日にちが心の薬になるのである。
 保険会社に就職していたころ、ある同期の女性と仲たがいしたことがあった。
 その女性が結婚退職するというので、人事課の私は上司の指示で、「退職日はいつですか」と、内線電話をかけたのだ。
 ところが、その女性は、「私が退職しても、うららさんは、全然平気なの?」と、怒ったのである。きっと、「やめないで」と言ってほしかったのかもしれない。
 それから仲は険悪になり、私もどうやら陰口を言われたらしかった。胃が痛む日々がつづき、とうとうその状態のまま、その女性は退職していく。
 そして、数年後、私も思うところがあって、会社を辞めた。
 その女性から電話があったのは、ついこの前である。十二年ぶりだ。
 人づてに連絡先を知ったから、ぜひ会って話がしたいという。私のことをなつかしがって、ずうっと電話の向こうで笑っている。
(覚えてないのかしら)
 私はいぶかしんだ。また会うことは、残念ながら都合で断った。
 だが、そこで気づいたことは、年月を経れば、たいがいの心の痛みは、消えてゆくということだ。あの出来事を口にしても「ああ、そんなこともあったわね」と一笑に伏されるだけだと思う。
 もちろん、もっと深い傷なら、何年たっても癒えないことだろう。肉親の死、事故や戦争の記憶……。それでも、一年、二年と経つうちに、ほんの少しずつ心は自分で再生する。人間の心とは、うまく作られているものである。
 だから、つらいことがあっても、「日にち薬」はぜひ頼りにしたいと思う。相手を怒らせてしまったのなら、二、三日、できれば一週間くらい待ってまた謝るのも一つの手だ。人の心とは、おかしなもので、その日によって形をころころと変える。相手の心だって、だんだん変わってゆく。
 年齢を経るにつれ、気がついたのは、世の中の人全員に自分を好きでいてもらうのは不可能だということだ。どこかで踏ん切らないと自分の人生がダメになることだってある。
 勿論、誰とだって仲良くしたいし、うまくやっていきたい。しかし、パーフェクト、で有り続けることはできない。だから、人間関係で傷つくのは、誰だって当たり前、のことなのである。
 物を書く人なら、つらい思いを 設定を置き換えて文章にするのもいい。日にち薬と同じく、物事をより客観的に見られるようになる。
 傷ついたな、と思ったとき、私は思う。
(これもネタにしちゃえ)
 作家にとって、無駄になる経験など一つもない。
 本当に、お得な職業だと思う。


 以上、これを書いたのは、たぶん八年くらい前ですが、覚えていた方がいらしたのは、うれしいことです。
 今は今で、日々の生活にストレスがないかといったら、それはウソです。現在の私は、何か悩み事に出くわしたとき、まずこう考えることにしています。
「はたして、これは一年後も、まだ悩んでいる事柄か?」
 そう思えば、たいていのことは、きっと一年後には「なんとかなって」いるはずです。だから、そういうことについては、深く気をもまないようにしようと心がけるのです。
 しかし、八年前に書いた中にも出てきますが、生きてれば、一年どころではなく、ずっと抱えていかなくてはならない問題もあります。そんな問題に初めて直面したときは、それはショックですよね。
 でも、そんな時も、「そのうちきっと自分もその問題に慣れていく」「いつか平常心でいられるようになるから大丈夫」と、「日にち薬」の効用を信じ、これまた、なるべく気にしないようにしているのでした。[るんるん] 
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